第1章

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「EMPの効果範囲はどうなのだ? 他の艦船や航空機、そして島の状況は」  コールが問うた時には、すでに被害状況はまとめられていた。  一般艦船や航空機への影響はなし。効果範囲はクラウディア号半径20キロで、この作戦のため民間船には規制がかけてありこの範囲になく、米国空母はギリギリ効果範囲外にあり僅かな影響で済んでいる模様。島も同様のようで、先ほど拓と電話が通じたから影響はないようだ。  だが、大きな問題が二つ。  まず、これで<ヒュドラ>の全てのデーターは消去された。船にあったメイン・コンピューターは全て壊れた。セキュリティー関係も破壊されたはずだ。それによって電子扉が開放されたのか、逆にロック状態になったかは分からない。  そして、混成部隊を指揮できる人間がいなくなった。  この作戦の指揮者はユージ、<M・P>、コール……この三人だ。ユージは現場の最前線だが単独行動で部隊を指揮しておらず、全体の指揮を通信によって行っていたのはコールと<M・P>だ。だが通信手段は完全に破壊された。もはや現場の部隊指揮官に任せるしかないが、捜査のプロ<FBI>、人質救出のスペシャリスト<DEVGRU>、戦闘のスペシャリストの<SEALs>、政治的理由により投入した日本の<SAT>……どの組織もそれぞれのルールがあり、各個、独自の判断で連携しあう事は不可能だ。  捜査状況としては絶望的だった。  この絶望的状況に思わず顔を手で覆うコール。  その時だった。コールの作戦用の携帯電話が鳴った。この携帯電話番号を知っているのは捜査関係者だけだ。そしてそこには<クロベ>と表示されていた。作業する全員が驚愕の表情でモニターを見た。クラウディア号のど真ん中にいたユージの携帯電話がどうして使えるのか…… 有り得ないことだ。だがコールは冷静さを取り戻し携帯電話に出た。 「無事か、クロベ捜査官」 『俺は無事です。今さっきの爆発の詳細を知りたい。EMPでしょう? 現状は』 「お前の携帯は無事なのか!?」 『俺のものは特別です。今移動中だから手短に!』 「分かった。口頭では時間を食う。すぐにデーターで送る」  ユージの回線が無事だという事にスタッフ一同面食らいながら、すぐに作業に掛かった。その間にユージは走りながら船の様子を報告してくる。
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