最後の天皇と記者とのやり取り

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 私はアキヒトが精子をばら蒔いて皇太子を作ったのだと思う。それ以外に子供を作る方法は考えられない。アキヒトがベッドを共にする時間は、行幸先ではない。分刻みの過密なスケジュールが待っている。皇居の中の方が自由はある。ただし、寝室と浴室とトイレ以外の空間はカメラで常時監視され、インターネットで公開されている。子供を仕込む時間はない筈だ。  寝室は、トレーニングしたり、読書したりできるほど広いが、中に入れる人間は限定されている。アキヒトの不在時に掃除などに入る女性は三人。アキヒト在室時に寝室に入室するのは高木侍従長と宮本八重という女官だけだ。宮本が、アキヒトとベッドを共にしているという噂は絶えないが、四十四歳の宮本が妊娠した兆候を示したことはない。また、1週間以上休暇をとったことはなく、二十年前に子供を作ったとは考えられない。  インターネットを見ていれば、記者クラブで得られる以上の情報が得られる。来客とどんな話をしているのかその様子を知ることができる。来客の声は消されることが多いが、読唇術のソフトを使えば、何を話しているのかをすべて知ることができる。重要なことを話す時、アキヒトは口を押えて話すが、顎の動きから会話を読み取ることができる。来客は、執務室や面会の間で会われ、寝室へ案内されることはない。昔、女性を寝室に案内したことがあったが、市民が「若い女を寝室に連れ込むな」、「売春婦を皇居で買うな」と書いたプラカードを持ってデモをし、「エロ天皇」といわれてから、アキヒトは寝室に客を通さなくなった。
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