最後の天皇と記者とのやり取り

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 処刑人たちは、家族全員を集めて来る。ターゲット以外の家族を切り刻んで殺してから、ターゲットを殺す。そんなむごたらしい死がやってくるのなら、自殺できる間に自殺した方がいいと、狂信者たちに宣言された人間は自殺する。それほど重大な反逆行為の証拠を握ったから、高木は私の指示をなんでもきくスパイになった。  宮本は、郊外のマンションに住んでいるらしい。だが、高木は住所まで知らないといっていたが、 「知らない筈がないだろう。五分で調べろ。おまえには失望した。五分後に動画を公開する」と脅したら、四分後に住所と電話番号をメールで送ってきた。  私は、皇居の通用門前で待っていた。だが、私の前には他社の自動車が五台待ち構えていた。 宮本の車が出てくると、記者が殺到して車を止めた。 「宮本さん。皇太子の居場所を教えてください」「皇太子の所へいくのですか」 車の前に立って止める役とインタビューするグループに分かれていた。皇室担当でない記者も混ざっていた。皇太子が出現したというニュースは、世界的な関心になっていた。宮本は、 「私に話せることは何もありません。天皇陛下に聞いてください」としか答えなかった。警官が三人配置されていて、車の前に立ちふさがった記者を荒っぽく排除し、宮本の車は静かに発進した。  記者たちは慌てて車に飛び乗り追いかけた。私は、その後を一人で追いかける。方向的には、宮本のマンションのようだ。宮本は、交通ルールを無視してUターン禁止の交差点でUターンしたり、スピードを出したりして尾行をまいていった。なかなかのテクニックだが、私は宮本がマンションに帰ると判断し、マンションに先回りした。  二十分ほどで宮本の家についた。コインパーキングに車を停め、近くの交番の警官に取材した。
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