最後の天皇と記者とのやり取り

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 警官は、 「宮本さんですか。私は交番勤務をしている河本といいます。駐在して三年経ちますので、このマンションについてもいろいろお聞きしています。この部屋は田中さんという方が住んでいることになっていますが、私は会ったことがありません。その方は、今どこにいますか」と尋ねた。不法占拠しているのではないか。ことによると田中を殺害したのではないかという疑いの目だった。それは、私が田中を殺した男が、宮本を拉致したといって警官を連れ出したからだ。河本は、 「中を見させてもらっていいですか」といって、中を覗き込んだ。  警官は、私と同世代だ。宮本は一瞬考えたようだったが、すぐに結論をだした。宮内庁発行の身分証明書を見せられれば、警官は最敬礼して帰っていくし、私も引き下がるしかない。でも、それはしなかった。 「わかったわ。但馬君だけ中へ入りなさい。河本さん。田中が帰ってきたら、交番へ出頭させます。それでいいかしら。田中は、元気にしているから、心配しないでください」と笑顔でいう。  私は、「おまわりさん。私の勘違いだったみたいで申し訳ない。話が終わったら、報告にいきます」といって、部屋の中に入った。宮本は中を覗こうとする河本の目の前で扉を閉めた。
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