最後の天皇と記者とのやり取り

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 私はリビングに通された。奥にも部屋があるようだったが、中を窺い知ることはできなかった。リビングは、落ち着いた雰囲気だった。 「そこのソファに座って。何が聞きたいの」といいながら、ウィスキーを持ってきて、オンザロックを作ってくれた。 「取材中は飲めません」 「だったら、今すぐ出て行って。もう少しリラックスしなさい」と、笑いながらいった。 「リラックスなんてできません。特に、美しい女性の部屋に入ったら興奮します」と答えた。別に社交辞令ではなく、女性の部屋に入れば緊張する。性的に興奮するというより、奥から誰が出てくるかわかったものではない。喉が渇き、声がうわずっている。乾杯して、ウィスキーを流し込んだのは、緊張を和らげたいと思ったからだ。だが、原酒を飲むと少しむせて咳き込んだ。 「敏腕記者が、どうしたんですか」と、宮本が笑い出す。皇居の中で仕事している時とは全く違う表情を見せた。目が大きく潤んで見える。魅力的だ。 「敏腕じゃありません。駆け出しの記者です」 「女官二人に手を出して捨てたと聞いたことがあるわ。そして、スクープになる内容でも、記事を書こうしない怠け者の記者さんだとも聞いています。私も一度じっくりお話ししたいと思っていました」 「評判が悪いですね」 「当たり前よ。何人の女を泣かせたの」 「それは違います。振られて泣かされたことは一杯ありますが、捨てて泣かせたことはありません。誠実につきあっています。一回関係をもった女性とは、永遠に関係を続けていこうと思っています。彼女たちを喜ばせるためのテクニックを日々磨いています。試してみますか」
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