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私は立ち上がった。
「皇太子は黒人なのか」
「そうです」
「それは発表する。黒人の天皇なんて認められる訳ないじゃないか。皇室の純血が汚されてしまう。だいたい、人身売買で奴隷女を買うなんて、いまどき許される話ではない」
「奴隷女を買ったのではありません。奴隷女を譲られて奴隷から解放し、時間を掛けてアキヒトが結婚を迫ったのです」
「そんなことを秘密にしておけない。書く」
宮本は、私を蹴飛ばした。
「この嘘つき。書かないというから、信用して話したのに。書くというなら、出ていきなさい」
「だって、黒人の天皇ですよ。そんなこと許されるわけないじゃないですか。日本国民を裏切る行為です。天皇家の歴史の中に、そんな前例はない」
「前例は作る物です。世界最大の帝国であるローマやアメリカ合衆国の元首には、黒人がなりました。黒人が、天皇になれない理由はありません」
「なぜ、こんな無茶なことをするんですか。国民には、黒人の天皇を拒否しますよ」というと、宮本は笑った。
「拒否するのなら、拒否すればいい」
「アキヒトは何を考えているんだ。勝算があるのか」
「わかりませんが、ヤケクソかもしれない」
「帰るゎ。記事を書く」
「帰っても、あなたの記事は載りません」というと、テレビをつけた。
黒人の青年が、記者に囲まれていた。それが、皇居の会見場だということは、すぐにわかった。自分の職場だ。黒人の青年は椅子に座っており、
「私はアブラヒムといいます。日本名は、ナツヒトです」
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