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自分を除く皇室番の記者がそろっていた。青年の肌は真っ黒だった。日本人的な風貌はしていなかった。ただ、優しい眼差しだけは父親似かもしれない。
「なぜ、記者会見が開かれるのに、俺には連絡がなかったんだ」
「ナツヒトがここに住んでいましたから、この部屋は盗聴を怖れ、通信妨害電波が出ています」
たしかに、携帯電話は圏外になっていた。
「しかし、さっきあなたの携帯はつながった」
「さっきは、切ってあったのです。あなたは、騙されたのです。あなたを、会見場から排除したくてここへ来てもらっています」
「何のために」
「あなたは、知りすぎています。怒りだしたあなたが、記者会見で何を暴露するのかが怖かったのです」高木が住所を伝えてきたことがすでに罠だったのだろう。
「黒人の天皇など、国民の象徴足りえない。ひっくり返してやる」と、怒鳴って私は立ち上がった。
「どうぞ、ご随意に」
「止めないのか」
「記者会見は無事に終わりそうです。最初だけ乗り越えれば、ナツヒト君が自分で何とかするでしょう。もう帰っていただいて結構です」
「俺は、天皇制を打倒し、アキヒトとナツヒトを庶民にひきずり下してやる」
天皇制の廃止を叫ぶのは、皇室番にとってはタブーだ。それだけで宮内省へ出入り禁止になる。でも、そんなことはもうどうでもいい。緊急事態だ。
「そういう考え方の人だと知っていました」
「驚かないのか」
「別に。でも、私はアキヒトが最も強硬な天皇制廃止論者だと思います。ただ、自分では廃止できないので、廃止されるような行動をしています。はっきりいって、バカです」
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