最後の天皇と記者とのやり取り

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 国民は、ナツヒトを皇太子として受け入れた。日本語が堪能でユーモアに満ちた発言に魅了された。黒い肌をしているが、端正な顔立ちをしていて貴公子という感じがした。しかし、「日本の元首が黒人になったら、日本人は誇りを失う」と叫んでいる人間はいる。ただし、肌の色で人間を差別するのは憲法上問題だといわれれば、表立って反論できなかった。だいたい、憲法には、天皇の肌の色の規定はない。  時の首相が黒人を皇太子にすることだけは止めてくださいとアキヒトを諌めたが、 「誰を皇太子にするのかは、私が決めることです。君に心配してもらう必要はない。天皇は、憲法上、象徴だ。わかりやすくいえば、国民のオモチャです。国民を喜ばせるオモチャは、誰にでも務まる仕事です」 「そんなワガママをいわれるのなら、皇室予算を削ります。国民の支持が得られない皇室に税金を投入する訳にはいきません」といった。日本は、国民主権であり、国民が選んだ総理大臣が予算についての権力を握っている。だから、予算が欲しければ、首相の指示に従えといった。 「予算を減らすのなら減らしてもらって結構です。お金が無くなれば、我が家の家宝である三種の神器でも売ります。きっと高く売れると思います。中国あたりが一番高値で買ってくれるかもしれない」と、平然と答えた。予算を減らしたら、国事行為を急病で欠席することも繰り返された。どちらが困ったかといえば、首相の方が音を上げた。首相の任命をするのは天皇なのだが、次の首相は、皇居に入ることさえ許されなかった。天皇が相手にしない首相の支持率は急速に下がり、辞任に追い込まれた。
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