最後の天皇と記者とのやり取り

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 奴隷の少年という言葉に、記者たちから悲鳴が出た。母親が奴隷女だというだけで、世論は大変な騒ぎになった。奴隷が天皇になるとなったら、どういう騒ぎになるのか想像もつかない。若い記者が、 「どういうことですか。日本は、そのアフリカの国の属国になるのですか」 「そういうことではありません。だいたい、ナツヒトはすでに奴隷ではありません。 自由人です。その上で、本人の意志で天皇に就任してもらう。 それだけのことです」と、穏やかに答えたが、あまりに衝撃的な発言で、だれも次の質問をしないので、私は質問を続けた。 「アフリカから買ってきた奴隷に三千年の歴史がある天皇家を継がせるというのですか。何をとち狂ったのですか。天皇制を破壊するつもりですか。アキヒトさん」と、皇室に相応しくない言葉遣いで問いただした。だが、アキヒトは顔色一つ変えずに、 「この決定によって、天皇家が滅びるのなら、滅べばいいと思っています。 私は、ラストエンペラーと呼ばれても後悔しません。 ただし、私の死後のことは、皆さんに任せようと思っています。 私は、ナツヒトに天皇としての作法をこと細かに教えました。 黒い肌が嫌いなら、白粉を塗らせればいい。 昔から京都では皇族は白塗りと決まっています」と、答えた。話すことはすでに限界に達しているようだった。
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