最後の天皇と記者とのやり取り

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 途切れ途切れの言葉だった。機械が言葉として認識できない言葉だった。みな、昔のようにメモを取っている。私は、泣きながらペンを走らせていた。録音しているから大丈夫なのだが、生の声にしか宿らない思いを受け取って感激していた。スゴイ男だと思って聞いていた。  若い記者が、 「なぜ、よりによって、黒人を皇太子にしたのですか。日本人の中から、養子を迎えることはできなかったのですか。判断ミスではなかったのですか」 「判断ミスなどしていない。 探したのです。 必死に探したのですが、 見つからなかったのです。 利益供与をねだる親や兄弟がいない日本人の孤児を探しましたが、 見つけることはできませんでした。 親が権利を放棄しているのは、奴隷しかいなかったのです。 だから、アフリカの国々を訪問し、奴隷を探しました。 奴隷だから、 両親や親族が後から権利を主張することはありません。 これ以上優れた天皇はありません。 ナツヒトは、十年間一歩も外に出ないで不自由な生活に耐えてくれました。 本人は、太陽を浴びないので、 肌が真っ白になってしまうと嘆いていましたが、我慢してくれました」
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