最後の天皇と記者とのやり取り

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「男の子がいらっしゃるのですか」と、ベテラン記者が聞いた。喉がカラカラだ。  天皇に即位できるのは、男性だけだ。女性皇族は年頃になると、外に出され皇族ではなくなる。古代に遡れば女帝はいるが、皇位継承者は男子に限定されている。そして、今、皇位継承権を持った人間はいない。  女性天皇を擁立する機運になったこともあるが、硬直化した皇室の伝統がその動きを潰した。一夫一婦制を維持したまま、直系男子だけに皇位継承権を認めるということは、数代で家系が断絶することを意味する。それは、簡単な計算をすれば、すぐにわかることだ。こんな制約の中で二十三世紀まで天皇が継承されてきたことの方が奇跡だ。無論、皇后が五人ぐらい子供を生み続ければ問題はないが、皇后は子供を産む機械ではないと権利を主張し、一人か二人しか子供を産まないことが多く、男の子が絶えてしまいそうになったことが何度もある。ギリギリの状態を歴代の天皇の「悪あがき」と呼ばれる手段によって綱渡りしてきた。 一度天皇に即位したら、皇位を剥奪するルールはないので、死ぬまで象徴として天皇を全うできる。発狂しても、認知症になろうが、天皇位が剥奪されることはない。摂政が置かれて実態として廃位になるだけだ。だから、即位のためには、あらゆる手段が使われたが、天皇に即位して二十年も経つとどんな不正な手段を使ったのかが明らかになってくる。  ある女性は、生まれた時から男として偽って育てられ、性転換して天皇に即位した。医学の進歩は著しく、性転換の痕跡は巧妙に隠された。天皇になってから、手術をした医師から性転換の秘密が漏れて大騒ぎになった。  性転換して天皇になった女性天皇本人に対しての直接的な非難はなかったが、本人の意思を無視した性転換は非人道的だという非難が国際的に高まった。国民からは、生まれた直後からウソの情報で騙されたことに対して非難が強くあった。その結果、皇后の出産には三人の部外者が立ち会うことが法律で決められた。いろんな「天皇の悪あがき」が試されが、一回使った手段は、二度と使えないように法整備された。皇太子に必要な要件が厳密に定義されるとともに、皇后に対する要件も厳しくなった。
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