最後の天皇と記者とのやり取り

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 アキヒトの父親は、テルヒトという。一般人として成人した。先代の天皇は皇太子がいないまま亡くなった。テルヒトは、服喪の最中に宮内庁に呼び出され、死んだ天皇の子だと明らかにされた。亡くなった天皇は不妊治療用に精子を病院に送り、子供を作らせていたのだ。親子だということを遺伝子的に証明し、皇太子になり、天皇に即位した。  その後、精子を提供して子供ができても、それだけで親子関係は成立しないという法律が成立し、遺伝子は親子関係の証拠にならないということが法律的に確定された。皇位継承権は親子の一日三時間以上の濃密なコミュニケーションを十年間必要とされた。実際、テルヒトは天皇の立ち振る舞いを学んだことがなく、天皇らしくないと陰口をたたかれた。  アキヒトは、テルヒトが一般人だった頃の恋人との間に生まれた子供だ。ただし、恋人は皇后の要件に該当しないので皇后になれなかった。親族に犯罪者がおり、過去に堕胎手術を受けたことが致命的だった。ただし、この女性は、「天皇の子供を産む」ことに同意し、契約を交わしてアキヒトを産んだ。この契約は母親には死ぬまで高額な年金を渡すことを約束したものだった。だが、その見返りとして母親としての権利をすべて放棄させられた。他の男性と結婚することや子供を生むことを禁じられた。子供を産むことは、天皇の兄弟を意味したから禁じられたのだ。アキヒトに会うことを禁じられ、アキヒトの母親だと名乗ることも禁じられた。最終的に、この女性は寂しさの中で自殺した。この契約書は女性の権利を奪い、不幸にするものだった。だから、アキヒトがいくら報奨金を積み上げても、アキヒトの子供を産んでくれる女性は現れなかった。
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