俺が魔王になるまでを語る

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テンプレのような絵に描いた事故。俺は確実にこの世を去った。もし、やり直せるなら……。そんな甘っちょろい考えを否定するように俺の一生は終えた。 心残りは大ありだがどうすることもできない。そんな俺の心を見透かしたように一人の男(神さまとほざいていた)が俺に声をかけてきた。 「人生もう一度やり直してみないか」 「喜んで!」 当然と言えば当然のなりゆきだったかもしれない。俺には藁にも縋る思いだった。残してきた嫁たち(フィギュア)。まだまだかわいがってやる時間が必要だった。 とはいえ俺はリストラ解雇の身。生きてさえいれば何とかなるかな……。そんな軽い気持ちだった。 「んっじゃあ、も一度現生へ」 俺は生き返るものと思った。俺の生まれた町、俺の育った場所、俺の生きているあの住所へ。しかし、神様はそうは問屋が卸さないとばかりに俺を違う場所へ送り込んだ。   異世界だ。 これまでにどれほどの輩が異世界に送り込まれたのだろう。俺はその冒険、奇譚を見聞きするにつけ笑ってきた。 どんだけ異世界いけんだよ。 俺にとってみれば異世界なんて現実逃避の何物でもない。引きこもりのいいわけでしかないと思っていた。
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