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どうやらいつもの電車に間に合ったようだ。しかも座れる。
「ねぇ、うるさいしきも……うう……」
「おい、どうした?」
スマホを取り出す。イヤホンを装着する。彼女は口を押さえていた。ポニーテールで何も考えずすぐに口走る彼女には何と良い仕打ちなんだろうか。それに見ててかわいらしい。
「大丈夫か?」
「大丈夫なわけないでしょ?心臓の鼓動の音はうるさいし、目はぐるぐる回るし……」
「この中でも見えるのか?」
「うっすらとね。でもまさかこっちの世界がこんな感じに見えるとはね」
「どんな感じだ?」
「お風呂の湯の中で目を上に向けて開けた感じかな?」
「お風呂だと死ぬんじゃねぇか?」
「プールよ。間違えただけよ」
ふてくされている。こんな彼女を今日は見てられるのか。
「そういえばマコちゃんって呼ばれてるんだね。アニメの……」
音楽を付けて無視をする。でもこの曲って……。
「これって?さっきのア二ソンじゃん……」
こいつにからかわれるから聴けない。
「あっ、消しちゃった」
「なぁ、俺……」
「何よ?急に?」
「お前のことが……」
「待った。ここでそれ言わないで。電車降りて電話のふりして言ってね?」
「あぁ、でも帰りでいいか?」
彼女は縦に首を一振りする。
「……そういえばなんでお前学生服なんだ?」
「昨日のアレよ……もう着くね」
降りなければ。かばんにスマホをしまっておく。いつも通り電源を切ってイヤフォンを取る。
降りた駅から五分歩いたところに自分が通っている学校があった。いつもそばにいる彼女がいない。昇降口を出て冷えた廊下を歩く。
自分たちの教室なのにいつもと違う教室の扉を重々しく開ける。
「あれ?夏美ちゃんは一緒じゃないの?」
「まさか置いてきたのか?」
クラスメートが私に言う。スマホの中なんて答えられない。
「まぁ、そんなとこかな……」
あいまいな返事をしておく。
少ししたら担任の先生が来た。
「お前ら、文化祭のこともあるんだしなるべく体調管理には気をつけるんだぞ。では、出席を……」
担任はクラスメートの名前を呼んで行く。
「新崎誠」
「はい」
自分の名前が呼ばれる。そして……。
「藤宮夏美……」
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