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出た。先生のありえそうでなさそうな話。お前のせいだからな、夏美。私はかばんからスマホを取り出し、音量を半分ぐらい上げる。
「自殺……マコちゃん、音上げたな。自殺なんかしてません。私は誠君のスマホの中にいます。信じられないけど」
椅子が倒れこむ大きな音が聞こえたかと思ったら、好ちゃんと呼ばれている女子生徒がこちらに来た。机に一滴の水滴が落ちた。
「本当だ。ごめんね。”死ね”なんてよくないね。もう一度話し合いたいから早くそこから出てきてね」
「うん、明日には出てくるから」
「ふうん、世の中は謎だらけだな。藤宮は出席しているし、一件落着と。ほれ、席戻れ。続けるぞ。船溝……」
私は音量を最小限に戻した。
こうして彼女のいるようでいない学校生活が始まり、あっという間に放課後になった。
「今日は昨日も言った通り大事な学校の会議があるから早く帰るんだぞ」
私たちもその担任の指示に従い、学校を出て駅に向かった。 電車に乗る。
彼女は何か話しかけても答えてくれない。
そういえば夜中に充電しようとしたら「感電する」とか言われて断られたっけ。結局、充電しなかったし家に帰るまでギリギリ持ちそうだ。
画面の先にいる彼女に早く会いたい。
そう思っていたら私と彼女の家に着いていた。
私は思い出した。大事なことを。
「もしもし、夏美」
「……」
返事がない。怒っているのだろうか。
「忘れてたそんな俺だけど、お前のことが好きだから」
「私もよ」
後ろから声がする。
そこには彼女がスマホを持ちながら立っていた。
「おかえり」
自然にその言葉が出た。
「ただいま。また明日会いましょう」
「おう」
こうして私たちはそれぞれの家に帰って行った。
どうやら夏美の意見に好という生徒も賛成し、無事文化祭も終了した。
それでも私たちの不思議な体験で告白しあった恋はまだまだ続いて行くのであった。
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