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『少し歩くか?』
と、私の不機嫌さに気付いた彼は私に言った
初めて人混みの中を二人で歩いた
彼の立場…… 私の立場を考えると、普段は無闇に歩く事をしない私達にとっては本来なら嬉しいはずなのに、やはり心から楽しめない
彼の地元なので彼に声を掛けてくるいかがわしい人も何人かいた
その度に彼から少し離れて待っていた
行き着けの店に入っても、やはり私の不機嫌な顔は変わらなかった
心の中では
『いけない』
と思っていても笑えなかったのだ
彼が私の機嫌を取ってくれているのは十分分かっていたけれど、やはり笑えなかったその時……
『俺がこんなにも機嫌取るのは慧だけだぞ』
と彼が言ったのだ
確かに彼が誰かの機嫌を取る姿は想像がつかない
その言葉を聞いた時に私からも
『ごめんね。今夜は遅くなるって聞いていたのに、私も疲れているから八つ当りしちゃったの。でも、いけないと思っても急には笑えないもん。』
と伝えた
なんとなく気まずい雰囲気の中ホテルへと向かった
気付いたら土曜日の23時過ぎ……
部屋が空いているのか分からなかった
が、運が良かった
一部屋空いていた
『俺達ツイテルよな』
と彼……
その言葉に頷く程度の返事をした私を見逃さなかった彼………
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