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八月も終わりになる頃
彼は眼の視力回復のレーザー手術をする為上京する事になっていた
七月に一度検査に行き八月に手術をする事が決まったのだ
その手術代はすべて私が出した
知らない人が聞けば
『騙されてるんじゃない?』
と思うかもしれないが、私が彼を見てきて、彼がそう言う意味で私を騙す人では無いと私が感じたからだ
私は彼に投資したのだ
七月の検査に行くまでは手術には一人で行き、夜は歌舞伎町辺りで遊ぶつもりでいたらしい
が、検査の時に当日を含め三日間禁酒禁煙だと言われ一緒に行く事を承諾してくれた
私は手術代を出すに当たり、彼に条件を出してあったのだ
① 私も一緒に行く
② 本名を教える
この二つだけ
私は彼の本名をフルネームで知らなかったのだ
無理矢理聞き出そうとは思わなかったが、投資するとなれば話は別だった
一緒に行くと言う事は、禁酒禁煙と言う事から承諾して貰えたが、本名は定かではなかった
たまたま八月の上旬に彼の祖母が亡くなった
礼服を新調した彼の支度を手伝った時、上着の内ポケの名字の刺繍を見て
『ごめんね、名字見えちゃった』
と何故か謝った私
彼の名字が分かった
手術の日バスで東京まで行った
その時に彼は過ちを犯した
彼にとって……
と言う意味だ
診察券を取出し確認をしていたのを横目で見た私はドン引き………
名前が違っていた
瞬間私は裏切られたと言う気持ちが表情に出た
彼は焦り、それをフォローするかの様に診察券を私に差し出した
私は
『今更いいよ』
と溢れそうになる涙を堪えるのに必死だった
逆ぎれとは言わないが彼は
『俺は俺じゃん』
と苦しい言い訳をしていたが、私はその事にはその後一切触れずに手術代を渡した………
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