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私の本気は、皮肉にもゆいが居なくなってから目覚めた。
ゆいはいつだって真っ直ぐに私のことを好きだと言ってくれたのに…
失って初めてゆいの存在の大きさを思い知った。
あまりにも潔く私の前から姿を消してしまったから。
悲しみとか寂しさなんてものを飛び越して心が空っぽになっちゃった…
ゆいをいっぱい傷つけてしまった。
ごめんなさいを並べても、きっと全然足りないんだろうな…って思っていた。
だけど、そんな弱気な私の背中を直やパパやまどかさんが押してくれたんだよね。
ゆいが残していった写真に映っていた神社…私が書いた絵馬。
ティファニーのダブルハート。
きっとゆいはそこで待っていてくれる。
今まで見つけられなかったけど、もう絶対に諦めない!
おさえきれない胸の高まりと、そして共存するざわめき。
走れ! 走れ!
見慣れた街並みの中を…
吐き出す息は真っ白で一瞬景色を隠す。
長い石段をかけ上る。
息が苦しくても決してやめない。
だって、もう後悔はしたくないから。
登りきったとき、静寂の緑の中、神様に手を合わせるゆいの後ろ姿が見えた。
「ゆいっ!」
力の限り叫んだ。
まるでスローモーションのようにゆいが振り返る…
神様ありがとう!
初めてゆいを見つけられたよ。
駆け寄ってゆいの懐にしがみついた。
長い腕でふわっと優しく包んでくれる。まるで天使の羽根に守ってもらっているみたい。ゆいの温もりがじわじわと伝わってくる。
「痛いよ…小百合」
「いいのっ!」
だって…
だって、ぎゅっとしたいんだもん。
「ごめんね…」
「本当にごめんなさい」
「ううん…」
今度はゆいが強く引き寄せてくれた。
そして、ゆっくりとくっついた体を離して見つめ合った。
思い切り背伸びをして待ち望んでいたチューをした。
何度も…何度も。
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