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幼き頃、親分ごっこをして遊んだ榊健司(さかきけんじ)。
この再会が幸太のその後を大きく変える。
「ボス。タバコ、いかがですか?」
刑務所。幸太の部屋。
胡坐をかく彼の下には他の受刑者の布団が重ねてしかれている。
即席のソファ。
「いや、いい」
「失礼しました。必要な時はいつでもおっしゃってください」
体育館での出会いの後、積もる話を終えた健司は、獄中の主要な幹部を集め、高らかに宣言した。
『いいか、てめぇら。今日からはこの小林幸太さんがてめぇらのボスだ。俺はこの方と親子の契りをむすんでいる。俺が子で、幸太さんが親。いいか、おめぇらにとっちゃ大親分だ。心して接するように』
何の因果か、監獄の長となった幸太。
以降、これまでのうっ憤を晴らすかのような傍若無人な振る舞い…をすることもせず、獄中の乱れた秩序をただし、そこで確かな地位を築いていく。
((人が今までの俺みたいな仕打ちを受ける必要はない…))
その片腕として活躍したのは言うまでもなく健司。
健司は、刑務所にもその功績が認められ、予定よりも早く仮釈放される処置が施された。
「親分。先にシャバで待ってますぜ。親分も早く出てきてください。それまでに、出迎えの準備は、自分がしっかりとやっときやす」
自分の事はいいから、元気にやってくれ。そんな言葉を背に受けながら健司は一足先に俗世へと帰って行った。
その4年後。入所から8年にして幸太も出所の時を迎える…。
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