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2011年。
ゆっくりと門が開き、幸太が歩いてくる。
振り返り、深々と頭を下げる。
出所。
8年の時を経た幸太は、その歳、33歳。
これからの人生をやり直すには十分な時が残されている。
「お勤め、ご苦労様でした!!」
角を曲がると、出迎えの列。
総勢20名程度。
「健司…。これは?」
「へへ。小林組の構成員ですよ。元々の俺の子分に、親分の子として何人かよその組から引き入れてます。ヤスも来てますよ」
大人になったヤスは、これでもかというくらいの高身長。その腰を大きく曲げて挨拶をする。
「ご無沙汰してます。親分」
「ヤス…。しかし、俺は組なんてもってないぞ?」
「なにを言ってるんですか。西山のオジキが組もたせてやるって言ってたんでしょ?」
「いや、しかし…。それに、西山の親父をオジキってお前…」
「禿鷹会の親分衆に加わるって事は、西山の親分とは兄弟分になるってことじゃないですか」
「禿鷹会のって…そりゃ無理だろ」
せめて、西山の子分として組を持つのが筋だ。
「いいから。さ、早く行きましょう」
「行くってどこへ?」
「西山のオジキの所へですよ。そんで、さっさと会長へもご挨拶に伺わなくちゃ」
「さ、親分。車へ」
屈強な青年が車へと案内する。
「お前は…?」
「へへ、親分。健介です」
健司の弟、健介が車のドアを開ける。
「お前まで、こんな道に…」
「親分。健介は親分の世話係としてつかせます。好きに使ってやってください」
「親分。親分の歩く先の警戒は昔から僕の仕事じゃないですか」
「健介。でっかくなったな…」
あんなに小さかった健介だが、鍛えられた今の姿は頼もしさを感じる。
「この4年間。親分のために鍛えておきました」
目を輝かせる健介…。
「一生ついていきますからね」
純粋な彼の目は、導くものがいないと道をそれてしまう危うさがある。そう、幸太に感じさせた。
((しかた…ないか))
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