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((そして…今))
回想はここまで。
現在、六本木、裏路地の車の中。
「…っそ。ありえねぇ。ぜってぇ嘘だ」
“鉄砲玉”を命じた西山は幸太にこう言った。
“いい弁護士つけてやっからよ。10年もあればシャバに戻れる。戻ったら組を持たせてやる。お前は35で親分だ。めでてえな”
「ぜってぇ嘘だ。組なんて持たせてくれるわけねぇ」
車の運転席で拳銃を握りしめ、ガタガタと震える幸太。
――キキッ。
2時間前にターゲットが入っていったクラブの前に迎えの車が止まる。
“いいか、幸太ぁ。しくじったら死ぬのはてめぇだからな”
熊虎組の親分、中山がクラブから姿を表す。
“死ぬのはてめぇだからな”
「くっそ。…ちくしょう…。いいよ。ってやるよ…やってやるよぉ!」
幸太は拳銃を握りしめると、車のドアを開け、中山めがけて飛び出す。
「死ぃねぇ!!」
――パンッ。
中山の背中から鮮血がほとばしる。
唖然とする取り巻き。
慌てて飛び出した迎えの車の運転手を蹴り飛ばすと、車を奪って逃走する。
「追え、追えー!!」
護衛の車が追いかけてくる。
「へへ、やった…。やったぜ…」
車は六本木通りをひた走る。
「はは…。……やっちまった…」
麻布警察署の前で車を止める。
「・・・。」
追っ手の車が追い付く。
「やってらんねぇ。なんなんだよ…俺の人生…」
車を降り、両手を上げゆっくりと警察署の入り口へ。
右手には拳銃。
「おい、お前、なに持ってんだ」
「へへへ…」
身構える警官へ向かって拳銃を放り投げる。
「お巡りさん。すみません、人殺しちゃいました。自首したいんですけど」
「か、確保!」
警官が幸太の身柄を抑える。
「へへ、やめてくださいよ。自首ですって…」
警官に囲まれて署内へ連行される幸太。
追いついたヤクザたちが、入り口へ消える幸太を茫然と見送る。
((やれやれ。つまんねぇ人生だったぜ…))
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