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刑務所の中。
「小林。お前の部屋はここだ。入れ」
「・・・。」
「仲良くな」
割り当てられた部屋へと入る幸太。
「よう、新入り。よろしく頼むぜ」
こわもての男たち。
腕や首筋、足首に入れ墨が見える。
「よろしくお願いします…」
「おう。しっかりな。しばらくは便所掃除、お前に頼むわ」
((そうだよな。俺は俺だもん。どうせここでもコキ使われるんだろう…))
運動の時間。
何人かの受刑者たちが体育館で身体を動かす。
「新入り。受刑者を仕切ってるここのボスを紹介してやる。きちんと挨拶するんだぜ」
「…はい」
連れられたのは用具倉庫。
扉を開けると、そこに敷かれたマットにうつ伏せで寝ころぶガタイのいい男。
数人が腰や手足をマッサージしている。
「ボス。新入りです」
「おう。まぁ、ちょっと待っとけや」
「へい。新入り。そこに正座しとけ」
固い床に正座する幸太。
((どこに来ても一緒だ。くそ。生まれてくるんじゃなかったよ…))
うつむき、拳を握りしめる。
待たされること15分。
「わりぃ、待たせたな」
ボスと呼ばれた男が起き上がり、胡坐をかく。
「まぁ、顔あげなよ、新入り」
「はい…」
顔を上げる幸太。目は遠いところを見つめている。
「・・・。」
牢名主は言葉を発しない。
「どうしました?ボス」
「…おい、新入り。名前はなんて言う?」
「え?」
「新入り、名前だ。ちゃんと挨拶せぃ」」
「は、はい。小林幸太です…」
「小林…幸太…」
牢名主が幸太の顔を凝視する。
「幸太…親…分」
「え?」
「親分じゃないですか」
「…ケンジ…君?」
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