2.転機

2/2
前へ
/22ページ
次へ
刑務所の中。 「小林。お前の部屋はここだ。入れ」 「・・・。」 「仲良くな」 割り当てられた部屋へと入る幸太。 「よう、新入り。よろしく頼むぜ」 こわもての男たち。 腕や首筋、足首に入れ墨が見える。 「よろしくお願いします…」 「おう。しっかりな。しばらくは便所掃除、お前に頼むわ」 ((そうだよな。俺は俺だもん。どうせここでもコキ使われるんだろう…)) 運動の時間。 何人かの受刑者たちが体育館で身体を動かす。 「新入り。受刑者を仕切ってるここのボスを紹介してやる。きちんと挨拶するんだぜ」 「…はい」 連れられたのは用具倉庫。 扉を開けると、そこに敷かれたマットにうつ伏せで寝ころぶガタイのいい男。 数人が腰や手足をマッサージしている。 「ボス。新入りです」 「おう。まぁ、ちょっと待っとけや」 「へい。新入り。そこに正座しとけ」 固い床に正座する幸太。 ((どこに来ても一緒だ。くそ。生まれてくるんじゃなかったよ…)) うつむき、拳を握りしめる。 待たされること15分。 「わりぃ、待たせたな」 ボスと呼ばれた男が起き上がり、胡坐をかく。 「まぁ、顔あげなよ、新入り」 「はい…」 顔を上げる幸太。目は遠いところを見つめている。 「・・・。」 牢名主は言葉を発しない。 「どうしました?ボス」 「…おい、新入り。名前はなんて言う?」 「え?」 「新入り、名前だ。ちゃんと挨拶せぃ」」 「は、はい。小林幸太です…」 「小林…幸太…」 牢名主が幸太の顔を凝視する。 「幸太…親…分」 「え?」 「親分じゃないですか」 「…ケンジ…君?」
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加