生はまこと偽物(いかもの)に尽きる

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  強い酩酊は、 人間の自我を いとも簡単に壊していく。 昔、 アルコールで何度も それを体現したことがある。 失ったものも、 忘れたけど 色々あったはず。 もうそんな強い酩酊には 浸らないと、 無意識の中で 決めていたはずなのに。 「……ッ! ん、はぁ……あ」 私のすべてが 桃さまにされることに 耽溺して、 それしか感覚がなくなる。 手足がそれぞればらばらに されてしまったかのような。 「杏さん…… 可愛いですよ、杏さん」 余裕のない声で つぶやき落としながら、 甘いそれとは裏腹に 私を殺す勢いで 責め立てる。 私にその手の キャパシティがあると見るや、 遠慮なくどこまでも ずぶずぶと 侵入り込もうとするような。 .
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