生はまこと偽物(いかもの)に尽きる

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  やめてよ、 名前なんて呼ばないで。 そんなの、 特別な相手とする セックスのときだけでしょう。 訴えたくても乱れ喘ぐ 嬌声が響くだけで、 私の意思など 頭と体と言わず、 あちこちでどろどろに 溶かされる。 こんなこと、 ちゃんとお付き合いした 人とだって経験ないのに。 途中で同意のサインは ちゃんとあったのに、 始まってみれば 一方的な行為で。 だからといって 蹂躙というほど 私のすべてを 踏みにじられている 気もしなくて。 不快よりも 曖昧な戸惑いが広がる中、 揺れて浮かされる 意識下で鎖が軽く こすれる音が聴こえた。 押さえられてはいても 私の手首は自由で、 彼の首輪とつながった リストバンドを 引くことはできそうだ。 .
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