生はまこと偽物(いかもの)に尽きる

14/37
前へ
/37ページ
次へ
  「……ッ、 すみません、つい」 「……?」 軽く乱れた呼吸の中で、 桃さまが掠れた 声を漏らす。 意味がわからなくて 黙っていると、 桃さまは顔を上げて 私を間近で 覗き込んできた。 恋人にするような その仕草に、 たっぷり余韻に浸る胸が きゅんと疼く。 桃さまの真っ黒の瞳が 少し潤んでいて、 ああちゃんと私で 愉しんだんだと思った。 「僕、その、 ……だめで」 「え?」 ちゃり、と 私と桃さまの間で 鎖が小さく鳴る。 「これで、 締めてもらわないと」 「……」 初めてこの人に されたときのことを はっと思い出した。 そういえばあのときも、 桃さまの最後を私、 覚えていない。 .
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

572人が本棚に入れています
本棚に追加