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頭の中で、
ラジオノイズが
ザーザー鳴って
思考の中の言語を
かき消していく。
自分が今どういう状況に
置かれているのか
わからないまま──
私は桃さまの首に
渡されたベルトを
巻いていた。
ベルトというか、
たぶん首輪なんだけど。
首輪には何度もホールに
通した跡があったから、
そこに留具を合わせると
彼の首に少し余裕を持って
ぴたりと収まる。
桃さまはその間
微動だにせず、
長めの睫毛を伏せていた。
首輪の先には細めの
リストバンドが転がっていて、
ああもしかして
これは私の手首に
つけたらいいのかな、
と自分でもよくわからない
知識からたぐり寄せる。
「できました、けど」
「ありがとうございます」
.
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