生はまこと偽物(いかもの)に尽きる

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  こんな乱暴で 分別のない獣が、 私の中のいったい どこにひそんでいたのかと 頭を抱えたくなる。 本当にめんどくさいし、 自分でも飼い慣らせる気が 全然しない。 背をしならせて 任せてしまいたい本能と、 アラサー女の 理性が綱引き合う。 勝手に涙がにじむのを 止められなくて、 引き裂かれそうな ゆるい悦楽に耐えつつ 彼の肩にしがみついた。 桃さまが ふっと息をつく。 「……可愛いんですよ、 あなたが。 おかしな話だ」 「あ……も、 わからないこと…… 言わなっ、で……」 「僕は、 全然振り切れないのに」 「え……」 理性が 戻りそうになった瞬間、 一気に引き上げられて うなるような声を漏らした。 .
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