生はまこと偽物(いかもの)に尽きる

4/37
前へ
/37ページ
次へ
  私をこんなにしといて、 こんなことをさせて、 この人は一体 なにがしたいんだ。 ちゃら……と 鎖の音を立てて、 桃さまはおもむろに 立ち上がる。 「わ」 驚いてベッドに お尻をつくと、 彼は当然のように 私の手首に リストバンド(これも黒革だ)を 巻き付けた。 「なに、 するんですか」 「あなたのためです」 「私の!?」 なにが、と 続けようとした瞬間 両肩を掴まれて ベッドに倒された。 さっきの丁寧過ぎるまでに スマートな行為は なんだったの、 と言いたくなるほど 荒々しい手つきに、 熱くなりかけていた 心臓がひやりとする。 覆いかぶさる 桃さまの真っ黒な瞳が、 目に見えない強さを 振りかざし、 私の体ではなく 意識まで押さえつけてきた。 .
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

572人が本棚に入れています
本棚に追加