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『しあわせの理由』 グレッグ・イーガン
『しあわせの理由』グレッグ・イーガン
オーストラリア出身の覆面SF作家グレッグ・イーガンの『しあわせの理由』を紹介します。
イーガンはローカス賞、ヒューゴー賞、をはじめとした世界的な賞を受賞、さらに日本でも星雲賞などを受賞している。詳しくはWikipediaで。
本作品は2003年刊行された短編9篇を収めた日本オリジナル第二短編集です。
イーガンも現代SFの世界的な有名な作家なので、いつか読みたいなと思っていました。
長編も有名ですが、作風を知るためにまずは短編から挑戦。
内容は、『理系ハードSF』と評価されるのが多いだけあって、学問的な難しい言葉もたくさん出てきます。では「理系SF読み」が好きな人だけに好まれるかというと、そうではありません。
そもそも「理系SF読み」の読者たちにも、賛否両論があること。例えば学術的なことに説明が少なすぎるなどの批判もあります。
これは、その説明してしまうと後で結末に関わることなので、あえて説明をしないでおくという意図もあるので仕方がないかなと僕は思いました。
ただ「文系SF読み」の読者にも読んで欲しいと、僕は思います。巻末の解説にも書いてあるとおりなのですが、SF小説であり、哲学小説でもあるのです。
テーマは、ほとんどさくひんは「アイデンティティー」の問題の曖昧さ、つまり自分(自意識)とはそもそも何なのか?という問題の曖昧さです。不確かさともいえます。
その中で人間の心理描写などの切なさや、哀しみは「文系SF読み」の読者にも充分に響くと思います。
僕自身は、結構「理系SF読み」も好きな方だと思いますが、そんな僕でも少し難しいかなと読み始めは感じました。しかし読み進めるうちに、勝手に「文系SF読み」に変わって、読後は心に染みる感じです。
この短編集の作品の多くは前半「理系」後半「文系」に変わるパターンです。
そして、少し切ないラストが多いです。
結論は面白かったです。
この理論は面白いという作品もありましたし、この気持ちわかるという作品でお気に入りもありました。
イーガンはクセがある作家だと思いますが、僕にとっては、そこが良いなと思いました。
次は長編、また違う短編集も是非読みたいですね。
おわり
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