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『宇宙消失』 グレッグ・イーガン
『宇宙消失』 グレッグ・イーガン
今回は短編集を読んで、お気に入りになった作家グレッグ・イーガンの長編小説『宇宙消失』の紹介です。全384ページ。
日本語翻訳版は1999年8月に初版です。
いきなりですが、裏表紙よりあらすじ。
《2034年、地球の夜空から星々が消えた。
正体不明の暗黒の球体が太陽系を包み込んだのだ。世界を恐慌が襲った。
この球体について様々な仮説が乱れ飛ぶが、決着のつかないまま、33年が過ぎた……。
ある日、元警察官ニックは、病院から消えた若い女性の捜索依頼を受ける。だがそれが、人類を震撼させる量子論的真実につながろうとは!
ナノテクと量子論が織りなす戦慄のハードSF。》
どうですか?面白そうですか?
超面白かったです!
面白さの3本の柱をお伝えします。
1本目の柱は、主人公と一緒に2068年のテクノロジーの社会を体験できることです。
様々な未来のテクノロジーが出てきます。こちらの原作は1990年に刊行されたのですが、今から30年前に考えたとは思えないほど発達したテクノロジー社会です。僕が面白かったのはナノマシンを使い脳神経に直接作用してコンピュータ化するものです。今風に言うとアプリです。
脳の中にアプリを入れるようなものです。
例えばGoogleマップのような地図アプリを脳の中に入れると、アプリを思考で呼び出し、すると頭の中に地図が見えて目的地まで案内までしてくれるのです。
その他にも脳神経に作用して睡眠促進や感情を抑えるなど、様々な種類のアプリのようなものが売られているのです。
その他にも未来のテクノロジーを物語から体験できるでしょう。今では普通になっているようなものもありますが、30年前の作品ですからニヤっとしますね。
2本目の柱は、量子論です。
最近では量子テレポートはノーベル科学賞で話題になりましたし、チラチラと量子コンピュータも話題になりますよね?
量子コンピュータについては間違いなく近い未来では一般的に実用されていることでしょう。
僕は量子論などの話が好きで、よくWikipediaやTV番組、ネット記事などで調べるのが好きです。
量子論を調べるようになったきっかけは、多元宇宙論(多世界解釈)に興味を持って調べていたからです。そこで出てくるのが『シュレンガーの猫』の話です。小説ではありません。量子力学における喩え話です。
これについては、本作品にも出てきます。
生と死が両方とも成り立っている事象が存在するというような話しで面白いです。
もっと詳しく知りたい方は、ネットなどで調べてみてください。
多世界解釈とは、簡単に言うと自分が何かを選択した場合と、その他全ての選択をした場合の世界が『存在』しているということです。
これも本作品では、かなり重要な部分です。
3本目の柱は、ハードSFですがストーリー性はあるので充分に楽しく読めると思います。以前イーガンを紹介した時も『理系エス読み』と『文系SF読み』の話を書きましたが、今回もどちらも楽しめると思います。テクノロジーの楽しさとミステリー要素があるストーリー、また主人公の自分探し(アイデンティティー)は切なくも考えさせられる話だと思います。
以上が僕的な面白さの3本柱はですが、人によっては違う面白さを発見できる要素がたくさんありますよ。細かいところの面白さはネタバレ含むので書きませんがね。書きたくてたまらないです。
イーガン読者と読書会(朗読会ではなく、読んだ感想などを話し合う会)とかあったら、絶対に行きたいですね。
本作品の読後に少し腹が立ちました。
なぜ自分は20年前に発売されていたイーガンの小説を読んでいなかったのかと。
絶対に本屋では目にしていたと思うと、なおさら悔しいですね。
でも、同時にこれからイーガンの作品を読むという楽しみも増えたのでOKですけど!
おわり
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