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『R帝国』 中村文則
『R帝国』 中村文則
今回は中村文則さんの『R帝国』の紹介です。
2017年8月 初版発行 単行本
本文367ページ。
最近僕のお気に入り作家になった中村文則さんの作品です。図書館で読んでいない作品を見つけると必ず借りる習慣になってしまいました。ちなみに、この他に2冊中村文則さんの作品を借りちゃいましたね。
『R帝国』の内容ですが、近未来ディストピア政治小説です。純文学なのか?エンタメ小説か?どちらの要素もあるので、なんとも言えません。どちらが良いとか優れているということはないですから。と、僕は思います。
架空の世界でR帝国をはじめ様々な国が出てきます。作者あとがきより「現実の何を風刺してるかすぐわかるもの、何を風刺しているか、一見わからないもの、風刺ではなく、根源を見ることで、文学として表現したもの」が物語の中に入ってきます。
面白いのは、架空の世界にある小説作品(結構たくさんの作品が出てきます)が、現実の世界でのノンフィクションな出来事という設定です。
例えば、小説『第二次世界大戦』とか、小説『9.11』などです。日本の第二次世界大戦時の沖縄戦や、アメリカ同時多発テロなど実際にあったことが小説として登場します。
物語中に現実世界の様々なことの問題提起がなされています。政治、宗教、ネットワーク社会、陰謀論、マスメディア、表現の自由、原発問題、戦争、兵器、などなどです。僕の場合は、この手の話は以前から好きな話なので、よくわかります。同感というか、その可能性があるのはわかるよ的な感じです。なので驚きはさほどありませんでした。面白かったですが。
逆にこの手の話を知らなくて読んだ人は、影響受ける人と、拒絶反応を起こす人に分かれると思いました。いや、細かく言うと世代や階層(そんなものは日本にはないと信じたいですが)によって反応は様々でしょう。
ネットでこの作品に関しての中村文則さんへのインタビュー記事を見つけたのですが、はっきりと現在の日本の「右傾化」に対する危機感ですとおっしゃってました。
と、この僕の文章を読んだ時点で、拒否反応を起こす人もいます。
僕は右派でも左派でもないので、(僕は「多様性」を認め、「冒険心」があるので、左派と指摘される可能性はあるが)、作品を読んで何を感じたかが重要だと思っています。
ただ一つ言えるのは、会社(仕事)や飲み屋などで好きな作家はと聞かれたら、中村文則さんと言うのは控えようと思いました。
面倒な話になるとイヤなので。
そう考えると、中村文則さんは勇気があるなと思います。それが賛成であれ、反対であれ。
案の定、この作品はネット上でかなり叩かれています。
中村文則さんは大江健三郎賞を受賞歴がありますが、以前僕が紹介した大江健三郎さんの作品の作風にも通じるとこがあるなと思いました。
そういえば大江健三郎さんも、かなり原発問題や政治面に、表明などを出されていますよね。
作中にこんな文章が出てきます。
[街を歩く「幸せに見える」人たち]
僕も、そんな風に人を見ていた時期があったなぁと思いました。世の中を《蔑んで》見ていました。今は「幸せに見える」人たちの中に僕は属しているのかもしれません。「幸せ」を感じで生きていられますから。
ただ、、、
たまに思い出すのです。病んでいたあの時の自分を。
今は抜け出せて良かったと思っているのに、何故か不意に病んでいた昔の自分を愛おしくなる時が。
おわり
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