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A『止みそうにないわね。』
B『そうですね。ところで神様は何読んでるんですか?』
A『今日、山で遭難した者たちの名簿兼プロフィールよ。』
B『えっ!?それヤバいじゃないですか!!』
A『今日はいつもより多いわね。この山でも16人遭難者がいるわ。』
B『っつ!!?た、助けに行きましょうよ!』
何気に凄い事を、さも何でもないようにのたまった惰女神様に、僕は我慢できずに進言してしまった。
A『神は無能よ。何かできてもしようとすらしない。直接手助けをしたら心優しいルシフェル様のように神力を一時的に失ってしまうもの。そこを下級神に付け込まれてルシフェル様は、魔王などと貶められてしまった。』
無表情に残酷な現実を告げる神様。
でも、表情にこそ出ていないけど、その声に、その瞳に自分の無力感に嘆き悲しみ、苦心しているのが契約者の自分にはわかった。
何より魔王と喚ばれる者の正体が、心優しい神様が貶められて生まれたことに驚愕してしまう。
B『…直接でなければ…良いんですよね?』
A『その通りよ。』
B『僕が神様の独り言を聞くのは可能ですか?』
A『可能よ。』
そう返した神様は相変わらずの無表情。
だけど、伝わってくる歓喜の気持ちに自然と僕の頬が緩む。
A『少し、暖房で火照ってしまったわ。』
そう言って立ち上がる神様。
外は吹雪いており、室内の暖房の効きは悪く肌寒い。
B『お供いたします。神さま。』
これは神さまと僕が起こす奇跡をつづった物語。
A『神は奇跡なんて起こせないわよ。奇跡を起こすのはいつだって人の強い心よ。』
B『はい。神さま。』
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