蛙の子はカエル

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よく政治家の世界は、魑魅魍魎の世界と言われるが……政治家側から見れば、有権者の方がよほど魑魅魍魎に見えてくるときがある。 『応援してます。頑張って下さい』 と言って期待させ、平気で他の候補者に投票するのはざらなことで。 それだけならまだしも… さも、投票したかのような顔をして、祝賀会を渡り歩く人たちもいる。 また実際に、お金で票を売り買いする人もいないとは、絶対に言い切れないのが現状だ。それは見知らぬ地方に行けば行くほど顕著に現れる。選挙とは戦ではなく、暴力だと思い知らされることも少なくない。 そんな裏事情を知るにつれ、政治家とは一体なんなのだろうと、考える時間が多くなってきた。選挙期間中以外でも常に有権者の顔色を伺い、あちらを立てればこちらが立たずの狭間で右往左往し。一度怨みをかうと七代末まで呪われるような勢いで、徹底的に選挙妨害を食らう。 選挙と田植えはよく似ている。 どちらもその時期が来ると、 深々と頭を下げる。 誰かがそう皮肉った。とんでもない。お百姓さんの方が身分はずっと高い。政治家は明日無き道を、ただ己の名誉だけを守って生きる、風船よりも軽い存在だと気がついた時、俺は政治家になることに酷く嫌悪感を覚えてしまった。 『役者になりたい』 ちょうどその頃、大学時代の友人たちが劇団を立ち上げ、華々しく活動していた。誘われ観に行って感化されてしまったのだ。
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