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舞台は明治の東京。
新政府は外国との交際を深めて国を発展させるため五箇条の御誓文を定めた。また、江戸から東京と改称し、翌年東京を新しい首都とした。人々は、これを「御一新」と呼んで新しい政治に期待した。
政府は日本を近代国家にするために欧米の文化がさかんに取り入れる。
結果、人々の衣食住は欧米風に変化する文明開化が起きた。
衣類は着物から動きやすい洋服に変わり、牛肉やパンなど日本人が食べたりしなかったものまで広がりはじめた。
建物は役所や学校をはじめ、煉瓦づくりなどの欧米風の物が増え、人力車や馬車が道路を走り、道の端ではランプやガス灯などがつけられて暗夜でも安心して歩けるようになった。
でも、それは一部の地域だけ。
いくら東京と言えども、外れではオンボロの長屋が建ち並び、ごろつきが白昼堂々歩いている始末。
まぁ、そんななかでも普通?に暮らしている男達がいる。
治安が悪いのに気軽に訪ねてくる気楽な人もいる。
学ラン姿で歩いている青年―――――宮沢賢治(みやざわ けんじ)もその内の一人だ。
薄い栗のような亜麻色の短い髪にぱっちりとした大きな目。健康そうな小麦の肌。なのにその愛嬌のある顔立ちと男なのに低い背丈で一見、少女に見える。
女として扱われないのは学ランのおかげだ。
そんな彼を女性が見たら母性本能がくすぐられてしまうだろう。
だからなのか賢治はおばちゃん世代に絶大な人気をほこる。
そんな彼が治安の悪い長屋地域に足をはこんでいるのは、長屋で暮らしている3人の男達に大切な用があるからだ。
さっさと用件を終わらせて餡蜜を食べに行こうと早歩きを決めた直後、突然目の前に3人の大男が気味の悪い笑みを浮かべながら立ちはだかった。
どうやら、さっそくごろつきに絡まれてしまったようだ。
まぁ、無理もないだろう。
学ラン姿で治安の悪い地域を歩いているのだから。尚且つ、賢治は男子の割りにか弱い姿をしている。
絡む相手として賢治は絶好の標的だろう。
「おい、おまえ。ちょっとツラ貸してくれや。」
真中に立っているリーダー格の人物がにやにやしながら言う。
それに対して賢治はきょとんとしたような顔で「僕の顔は取り外しができないので貸すことは出来ません。なんかごめんなさい。」となぜか謝る。
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