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呼び止められて、振り返るとそこには…
毎日シャンプー・リンスは当然として、トリートメントやコンディショナーを欠かしていないのが一発で解るほどの艶やかな髪の毛が優雅に風でなびいて、一流のメイクアーティストでも素材の良さに適わないと白旗を振ってしまう麗らかな顔立ちの女性。
つまり、美しい女性が立っていた。
おいおい、ちょっと待ってくれよ。
こんな美人が声をかけてくるなんて……どういうことだい、神様?
……そうか!
美人局か!
そうに違いない。
そうでなければ平々凡々な俺に、アラブ石油王が片膝を地面着けて、100カラットのダイアモンドが付いた指輪でプロポーズしてしまうほどの魅力的な女性が声をかけてくるはずがない。
「あ、あの……」
おっと!
うかつに返事してしまっては最後だ。
賛美歌のような言葉で、惑わさせて、魅了させて、ピンク色な吐息で骨抜きにされて、気付けば高い値段の変な絵画を買わされて、ついでに一億円の保険に加入されてしまう。そうに決まっている。
そうはいかんぞ! そうなるものか! なんて卑猥だ!←(?)
ここは聞こえないフリをして、颯爽と北風と共に去り……。
「一目惚れです。私と付き合ってくれませんか!」
と女性は、頬を赤らめて告白をしてきた。
WHY!? WHY!? WHY!?
どっかの音楽番組みたいに言ってしまったが、WHY!?
どういうことだよ、告白って! これって愛の告白だよね!?
なんで美人が俺なんかに告白してくるんだよ。一目惚れって?
ははーん。解ったぞ。
ビックリドンキーみたく、ドッキリだな!
みなまで言うな! そうなんだろう! そうなんだ! OK!
俺は騙されない!
「ご、ごめん。今はそんな気になれないんだ。それじゃ!」
全速力で、その場を立ち去ったのであった。
***
「えっ! 断われたの? 何がいけなかったのかな。あんた、女の私が見ても美人で、性格も大人しいし。美人なんだから、声をかけただけで上手くいくと思ったんだけどね……。あー泣かない泣かない。もっと素敵な男性に巡り会えるわよ」
-終-
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