優しき魔女ミサキ ～鬼畜なヒキコモリ～

優しき魔女 「三秒ルール？」

　人にぶつかってしまいアワワとパンを落としてしまいました。

　うわぁ、やっちまった………もう食えないじゃないか………と転がる一抱えもある硬いフランスパンもどき。

　ちょっと落ちたくらい三秒ルール！という訳にもいかないのです。

　この世界では衛生観念が酷いのです。手洗い？うがい？何それ、どころかトイレを隔離する、という概念が無い。道端には平気で犬猫馬牛、果ては草むらや建物の影には排泄物が転がってます。まぁ、この町はこれでも綺麗らしいですが………

　私のような虚弱体質の人間が落ちたものを食べればリアルに死ねると思われる環境。

　しかし買ったものを落としたからといってそのままというのも元日本人としては無責任だろう、ということで人の流れを横切るように拾いに行ったら、あれ？無い？

　キョロキョロして程なくして発見。
　私の視線の先には首輪を付けられ建物の柵に繋がれた五歳位の小汚い少女が必死に私のパンに齧りついておりました。あーあ。

　腹壊すなよ？おばちゃん知らんで？と思いつつ。

　それが彼女と私のファーストコンタクト、だった訳です。