優しき魔女 「押し売りは駄目! 絶対!」

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 スキンヘッドな強面お兄さん、奴隷商人が長さ三十センチくらいの棒を持って怒鳴ってます。アウアウアーとアホみたいに動揺する私。そりゃそうです。基本的には社会不適合者ですからね。家族と数少ない友人以外とまともに会話出来る自信は米粒ほども御座いません。  私に非が無くても怒られたら怖い。怖いので謝ろうとする、けど怖くて声が出なくてアウアウアー。 「お前なぁ! 奴隷に勝手に物与えて良いと思ってんのか!? ああ!? 商品台無しじゃねーかよ!?」  意味が解らない。危害を加えたなら解るんだけど、仮に食べ物与えたとして何で台無しになるの!? 「え………うえ?」 「勿論買ってくよな?人様の商品に手を出したんだ、それが筋ってもんだ!!」  893《ヤクザ》 「わ、私の兄は、騎士で」  そうだ、お兄ちゃんだ! お兄ちゃんは騎士なんだぞ!? 「んなこたぁ関係ねーだろ!? 買うよな!?」  おしっこちびりそうでした。久々に他人様とお話したかと思えばヤクザな人でした。帰りたいよママン……ヒキコモリたいよパパン…… 「は、ひっ! 関、けい、無い、です、ええ、買い、ます」  腰が半ば抜け、もう、そう答えるしかありませんでした。 「毎度アリィ! これ、手続きね? いやぁ、お客さんお目が高い!」  阿修羅の形相から一瞬で菩薩のような笑顔。あ、実はそんな怖い人でもないのかな?と一瞬考え、 「あ……あの、やっぱり、いらな」 「あぁぁあん!?」 「ここにサインですね!?」 「えぇ、そうですそうですキャンセル不可ですからねー! 明日には役所で受理されますので証書受け取りに行ってくださいね! こちら仮証明書です」  ……えーと、そうそう。手続きは、イメージ的には前世でいうところの自転車の購入に近いです。奴隷にはそれぞれ首裏に固有記号&ナンバーが刺青され国に届け出されています。そしてその固有番号と飼い主をセットで記録する訳です。そのため所有する奴隷が何か悪さをすればイコール主人の責任、という決まり。  あぁ、ご説明が漏れました。犯罪奴隷には「逃亡奴隷」というものも含まれます。ご主人様から逃げた奴隷は殺処分か国に接収され鉱山行きが定番です。
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