優しき魔女 「奴隷制? 別に良いんじゃないすか?」

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 さて。奴隷少女(推定五歳)を買ってしまった私。困ったものです。ええ。奴隷というのは家畜やペットとはちょっと違うのです。  そりゃそうだ人間だから?  いえいえ、違います。基本的には家畜と扱い、社会的地位は同じなのですが、通常の馬や牛、豚などの家畜と違う点は、奴隷というのは個人の所有物ではないと言う事です。  前回ご説明差し上げた通り、奴隷というのは国の所有物とされます。実質的には個人の所有物、と考えた方が現実に則している訳ですが、明文化された法によって奴隷の御主人様・飼い主はあくまで「国から奴隷を借り、扱う権利」を与えられているだけなのです。  で、逃げられれば逃亡奴隷となり、通報しなければ多額の罰金。通報すれば罰金は通報しない場合より遥かに少ないものの管理能力を問われ、かつ捜索費用という名の罰金を払わされた上に奴隷は没収、という名の殺処分もしくは犯罪奴隷扱い、となり飼い主にしてみれば財産が減ることを意味する訳です。さらにそれらを払えなければ飼い主も罪に問われ、最悪国の奴隷、国奴・犯罪奴隷になりかねません。  つまり逃がすことも不経済極まりない上に危険な行為でしかないのです。 「……取り合えず、明日、役所に行くか……おい? 立って」  私の存在を一瞬だけ認識した少女。私の声に構わず硬いパンを齧り続けています。本来はそのパンは保存が利くようにと水分少なめで食べるときはスープに浸して食べるもの。そのまま食べるには非常に硬いパンです。  正直貧乏人の食べ物なのですが、名実ともに貧乏人であり、そもそも食べることにあまり興味が無い私は保存が利く上に安いから、という理由のみで買っています。 「ほら、行くよ。立って歩きなさい」  少女の首輪に繋がった縄を犬ころの散歩のように引っ張って立たせます。一瞬苦しそうな顔をしましたが、すぐに立ち上がり、こちらを伺うような、怯えたような目をしています。パンを齧る口は止まりません。 「それ、食べてて良いから、自分で歩いて」  間違っても逃げられないように手にしっかり縄を巻きつけます。逃げられた場合の罰金、超高いんすよ確か。 銀貨五枚、銅貨にすると五十枚。  特に専門職でもない人間が二、三ヶ月掛けて稼ぐくらいの金額で日本円にすると五十万円相当。
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