優しき魔女 「さぁ、楽しい晩酌だ!!」

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 だが、いくら少女とは言え。か弱い子供とは言え。明日はわが身。そういう世界なのです。私の目の前に出てくる前に死ねば良かったのに………とふと思った位です。やはりヒキコモリ最強なんですよ。  ヒキコモリとは言え、家族に大事にされて育ったとは言え、この世界の理屈、ルール、不文律は理解しているつもりです。まだこの世界に、少なくとも私が知る人間社会においては「平等」などという諭吉様的思考回路は無いのです。  宗教だって神の下に人は平等ではなく、既存の身分制度の最上位に神を置いただけの事。つまり、神からすれば、そしてそれらを利用する立場の人間からすれば、全ての身分はそれぞれの高低差はあれど神の側に居る彼らが最終的には最上位なのです。  そう考えれば確かに「神の下に平等」と言えるかもしれませんが、皮肉で言ったつもりがむしろそれがリアル、という世界なのです。  必要だからこそ、奴隷は社会に存在することが黙認されているのです。いくら前世の記憶持ちだからって、別に英雄になろうとなんて思ってませんからね。  自分が引き篭もるためなら、平和に暮らすためなら私は誰が死のう虐げられようと知ったことじゃ御座いません。  だから、私にとって奴隷とは家畜同様。  それが社会のルールならばそれに従うのが私のルール。  押し売りされた少女に同情するなど有り得ない話なのです。 「……りが……とぅ……」 「五月蝿い黙って食え殺すぞ手前(テメェ)」  そういうと少女は怯え、そして言われる通りに埃まみれの餌を啄ばみます。怯えていたかと思えばいつの間にか必死に。意地汚く、直接床に、芋虫のように這って、家畜らしく貪る。必死に。  この世界で、奴隷は人間ではないのです。  それがルールなのです。  殺すぞ……口の中でもう一回呟き、私は酒瓶を呷りました。
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