優しき魔女 「お役所仕事は異世界だろうと共通らしい」

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 妹エリーはまだ学生です。魔術師コース行ってるはず。よく知らんけどたまに魔術のことを聞いてくるので。  才能ないです、あいつ。水出してみな、と言ったらテーブルの上に数滴だけ水分が滴っただけですから。しかも30分くらい掛けて。  もう、その額に張り付いた汗の方が多いんじゃねーの?と笑ったら泣いて怒られました。妹は怒った顔も可愛いのです、ええ。  さて、袖の下は通過儀礼、慣習とあれば仕方有るまい。チップみたいなもんだと思えば良いと思いお兄さんに感謝の意を伝え、 「あ、あの……」  とおずおずと受付のおっさんに青銅貨1枚を渡します。 「はい、証書」  にっこりなおっさん。  ……賄賂渡した瞬間に証書ゲットだぜ!?  もうね、始めから貯金箱でも置いといて下さいよ。 「お嬢ちゃん、気前良いねぇ」 「は?」  振り向くと腰の曲がったお爺さんが十代後半くらいの女奴隷を引き連れていました。 「屑鉄一枚じゃぞ?普通」  屑鉄十枚=青銅貨一枚です。つまり屑鉄=百円程。  そのおじいさんの言葉に受付のおっさんの顔を見ると 「ほら、終わったら帰った帰った♪」  してやったり、という顔。  そりゃ、十人分貰えれば機嫌も良くなるわな……  チャラ男はちょっと離れたところでニヤニヤしてます。  つまりは、ボラれました。世間知らずを鴨にするのは世界共通………とはいえあのチャラ男は単なる愉快犯でしょう。からかわれたのです。  ふう……痛快活劇物語だったらここでチャラ男を〆るところでしょうが、私は非力な女なので論外です。せいぜい、道で転んで頭から動物の糞に突っ込んでペストにでも掛かって死ね! と心の中で思うくらいが精一杯。  だから外は嫌いなのです。この世界の人達は汚い人多くて嫌いです。精神的にも衛生的にも程度が低いのです。勿論、個人差は有りますが、酷い人が多いと思うのです。  例えば荷物をどこかに発送すれば、十回に一回は何かと理由を付けられ届かないそうですからね。流通・サービス業の質の悪さは即ち治安などにも直結する訳です。  やはり日本は異世界と比較しても良い国ですわ。二十五年もこの世界で生きてると家族も居ない前世に戻りたいとか思わないですがね。
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