エリカ 「私のお姉ちゃんはヒキコモリ」

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 私には兄と姉が居る。  それぞれ十歳差。兄が三十五歳、姉が二十五歳、私が十五歳。  兄と私など、親と子ほど離れている。恥かきっ子という奴だ。  両親ともに健在で、比較的我が家は裕福。父の代限定ではあるもの貴族として扱われている。  功績をあげれば永代貴族となる可能性もあるのだが、兄はそういった方面にあまり興味が無く、騎士団、しかも有能にも関わらず実家のある辺境領の配属を希望した。  兄は……重度のシスコンだ。だから有望と言われ将来を期待されたにも関わらず、私と姉が居るこの地に根ざしたのだ。  色々な意味で残念な人、それが兄。  兄にとっては10歳の時に妹、私にとっては姉のミサキが誕生。年離れた、しかも妹だ。さぞや可愛く思ったであろうことを想像するのは容易だ。さらに姉は生来病弱で熱を出しては寝込む、を繰り返していた。それは私が生まれてからも続き、ずっと家で療養していた。姉流に言えば、引き篭もっていた。  兄はそんな姉を心配し、溺愛し、看病し、調子のいいときは勉強を教え、魔術を教えた。さらに二人ともお酒が大好物であり、その点でもことさら仲が良い。  姉は兄を便利に使う。慕っているのは本当だ。ただお姫様気質、というわけではなく、兄が微妙に困らないであろう匙加減で多くの我がままを言うのだ。  まだ私が七歳の頃、あまりに他の家庭の兄妹と違う関係に気付き、そして呆れ、姉のミサキに注意したら 「あー……お兄ちゃんにお願いするなっていうなら、まぁ、別に良いけど……多分うざいよ?」  と言われ、何のことやらと思ったが数日後、理由が解った。  兄が私や姉に四六時中付きまとうようになったのだ。果てはトイレの前まで来てさすがに引いた。  これまでだって色々気に掛けてくれていたのは解るが……溺愛されているのは知っては居たが……  私か姉さんの用事を日々、それなりの数をこなさないと調子が悪くなるらしい。どんな生物だ。 「お兄ちゃんはねぇ、重度のシスコンだから、私たちが我がまま言って構わないと生命力が尽きるんだよ」 なんという不毛な関係だ。だから嫁が貰えないのだ、兄は…… 「これもコミュニケーションさね。まぁ……昔から私が寝込んで迷惑掛けてるから、それで癖ついちゃったんだろうけど。エリーには悪かったね?」
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