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と少し悲しそうな目をして苦笑する姉。
「いや、そんなことないよ! お兄ちゃん優しいし!」
「そうだね! 私の調教の賜物だ! 感謝しなさい!」
急にカッと切れ長の目をこれでもかと見開き叫ぶ姉。
そうだ、本当の馬鹿なのだ! この姉は!
「調子に乗るな!?」
「グェ!!」
姉は脂肪が殆どないので打撃を与える場所を間違ってはいけないのだ。
さて、姉は病弱だ。
お酒の飲みすぎでは!? と思い断酒させご飯をしっかり食べさせると、見事に体調を崩し痩せた。
酒が主たる栄養源など何かの間違いだろう、とそれを3回ほど繰り返し全く同じ結果となったのには姉のことながら心底呆れたものだ。
そして申し訳ない気持ちで一杯だった。
「エリーは本当にアホだなぁ」
姉は、体が小さい。十歳の頃の私とすでに成人していた姉とで比べると、私のほうが身長が高かったくらいだ。
腰まで伸びた長い母譲りの綺麗な黒髪。スラリとした、痩せすぎともいえるが、若々しく、むしろ幼すぎると言える中性的な美しいシルエットの体躯。慎ましやかな鼻と唇。精気の感じられない陶器のような白い肌。切れ長の目。
苦笑する姉は、その目の奥にはいつも優しい光が宿っていた。
しかし普段はぼさぼさで手入れをしないままの髪、たまに外に出ても大きな三角魔女帽を目深に被り顔を隠す姉。
「お姉ちゃん、美人なんだからちゃんとしようよぉ」
と私が言うと
「眼鏡でも買ってやろうか?大分視力が落ちてるようだぞ?」
と姉は苦笑し
「おにいちゃーん! エリーに眼鏡買ってあげたいからお小遣いちょうだーーーい! 財布カモーーーン!!」
実家一階から、二階の兄の部屋に向かって大きな声を出す。さすがに財布扱いは可哀相
「何だと!? 俺も行くぞ!!」
可哀相でもなかった。
バーンッと扉を開け階段を使わずジャンプして一階に下りてくる兄。階段使いなさいよ……そもそもジャンプ出来る高さじゃないのに……
「お小遣いだけで良いよ?」
「俺も一緒に行きたいのだが!?」
「お兄ちゃん居ると知り合い沢山だから疲れるんだよねぇ」
また苦笑する姉。本当に苦笑が多い人。そしてそれが似合っても居る。
所謂男性が群がる色気の有るタイプではないが、そう、妖精、それも悪い部類の、悪戯好きな妖精のような人だ。
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