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魔石を使うということは使用者の魔力を魔石に込め魔力の純度を上げ、魔石を通して対象に魔力を捧げるということ。
魔方陣はそれを構成する要素(粉や塗料、糸等)そのものに魔力が込められており、召喚対象に心地よい空間を提供する事によって召喚し易くするのだ。
魔石そのものを使ったり、杖に仕込んで使ったりと色々だ。魔石の種類、純度によって耐久性や効果(魔力伝導率・増幅率・属性等)が変わる。
しかし姉は、魔石や魔方陣を使わず水を出せ、という。
私は自分の魔力そのものを餌に空間へ放出し、そして同時に水を得るための精霊との交渉を行おうとする。
なかなか上手くいかない。どちらかが文字通り片手間となり、バランスが取れず具現化しないのだ。
しかし30分ほどだろうか。魔力が尽きかけ私の意識が朦朧となってきたのを感じ、そろそろ危ないか?と思い至ったところに、ポタッポタ、と数滴、目測を誤ったが水が出現したのだ!
「ハッ!お、お、姉、ちゃん!! ハァッハァ!!」
気付けば息が完全にあがっている。だが、私は達成感に包まれていた。
嬉しい! 姉も喜んでくれるだろう!
と思った私にあろうことか姉は、
「え、これだけ?」
キョトンとした表情で呟いたのだ。
は!?・・・・・はぁ!?
「かいてる汗の方が多いんじゃない?エリーもまだまだだなぁ」
愉快そうに笑う姉。カチンと来ると同時に、愕然とした。どう考えても私がしたことは、自分で言うのも何だが、凄いことなのだ。
剣を操りながら同時に弓を放った、歌を歌いながら食事をした、逆立ちしながら編み物をした、という位に滅茶苦茶なことを成し遂げたはずなのだ!
「修行が足らんなぁエリーちゃんは~」
「手本!なら手本を!」
「はは、ちょい見てなさいな」
………………
「はい、飲んで良いよ?」
「普通に水差しから水入れただけじゃないの!!」
「だってその方が楽じゃん」
そうじゃないでしょ!?魔術の勉強でしょ!?これは!!
怒りで震える私。
いや、いつものことだ……姉は私をいつもからかうのだ………
落ち着くため、姉がくれたコップに入った水を一気に飲み干す。
淑女らしくない?知らないわよ!そんなこと!
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