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「まぁ、魔術ってのはあくまで道具であり、技能でしかない。専用の器具や道具、環境が揃ってるなら無理に使うもんでもないでしょ?」
確かにそうだが……今は魔術を教わっていたはずだ。魔術の授業で魔術を否定するなど本末転倒じゃないか。
「まぁ、そう怒るな。とっておきのぶどうジュースがあるから飲んでみな」
そう悪戯っぽくウインクする姉。もう……
「お姉ちゃんがお酒以外買うなんて珍しい」
「愛するエリーのために決まってるじゃないの。言わせるな、恥ずかしい」
そういう科白を吐くならもう少し恥ずかしそうに言って欲しいものである。
「全く……頂くわ」
「どうぞ?」
ニコニコ笑顔の姉。でも動かない。自分の家にも関わらず、そして妹とは言え自分で用意しろ、ということか。全くもう。
「もう。どこに有るの?それは」
「そこに有るじゃん」
愉快そうな、そしていつもの苦笑も混ぜながら、私の目の前にあった、そして先ほど私が入ってた水を飲み干した筈のコップを指差す。
「ッ!!」
絶句、というのはこういうことだろう。姉は度々私の心臓をこうやって跳ね上がらせる。そして「やり方は自分で考えろ」と言わんばかりに後は煙に巻こうとする。
有り得ないのだ。教科書にも載っていない、教師に聞いても誰も知らない、御伽噺の魔法使いのようなことをやってのける姉。
それがミサキお姉ちゃんだ。
姉であれば宮廷魔術師にだって成れるかもしれないのに………いや、確実になれるだろう。
しかし、実家での姉の口癖は「働きたくないでござる!」だ。姉の言葉で一番繰り返し聞いたのはこの言葉かもしれない。
全く、どんな姉だ……
そして、魔術についてはいつもこういう。
「エリーは魔術にこだわるから疲れるんだよ。頭が固いと魔術も硬くなるよ?」
……そうなのかもしれない。いや、姉が出来ることを証明している以上、私は頭が固いのだろう。
「おっぱいはちょっと柔らかいね!!これは良い胸だ!!将来楽しみだよ!?」
いつの間にか私の背後に回り胸を揉む姉に肘鉄を入れたのは致し方ないことだろう。
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