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本屋を一周し終わって、まだ冷めた風の吹く外へと飛び出した。戦利品は、なし。コートのポケットからスマホを取り出す。
結局読むものは『紙の本』ではなくて『データの文章』。無料。短時間。おまけに書いた人と繋がれるときて、利用しないほうが馬鹿みたいだ。
いつものようにケータイ小説…スマホ小説を読むのに時間をかける、につれて何だか俺は自分が馬鹿になっていくように感じる。面白くなくても紙の本を読んだ方が自分の『ため』になったのではないか。この、スマホ小説こそ、『意味』のない、エンターテインメント性にも欠けた、『自己満足』にしか過ぎない、作品なのではないか。
当たり前だ。だって無料。誰だって見ることができ、読むことができ、書くことができるサイト。『売れる作品』が評価され、『売れない作品』は埋もれていく。そんなの、今の文芸の世界と何が変わらないと言うのか。
読んで、感想を投稿し、「感想ありがとうございます」というコメントを貰うだけの俺の生活は、実に味気ない。
そんな俺の悩みとは言えない苦悩を誰に言おうとも思わない。言ったら、こうだ。
「あなたは書かないの?」
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