1

4/7
前へ
/7ページ
次へ
本屋を一周し終わって、まだ冷めた風の吹く外へと飛び出した。戦利品は、なし。コートのポケットからスマホを取り出す。 結局読むものは『紙の本』ではなくて『データの文章』。無料。短時間。おまけに書いた人と繋がれるときて、利用しないほうが馬鹿みたいだ。 いつものようにケータイ小説…スマホ小説を読むのに時間をかける、につれて何だか俺は自分が馬鹿になっていくように感じる。面白くなくても紙の本を読んだ方が自分の『ため』になったのではないか。この、スマホ小説こそ、『意味』のない、エンターテインメント性にも欠けた、『自己満足』にしか過ぎない、作品なのではないか。 当たり前だ。だって無料。誰だって見ることができ、読むことができ、書くことができるサイト。『売れる作品』が評価され、『売れない作品』は埋もれていく。そんなの、今の文芸の世界と何が変わらないと言うのか。 読んで、感想を投稿し、「感想ありがとうございます」というコメントを貰うだけの俺の生活は、実に味気ない。 そんな俺の悩みとは言えない苦悩を誰に言おうとも思わない。言ったら、こうだ。 「あなたは書かないの?」
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加