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スマホの電源を落とし、風が吹く冬の街中をひとり歩いていく。
文学賞の応募締切まで1ヶ月を切った。
けれど俺の愛用マシンのwordのデータは真っ白なまま、1ヶ月前から一文字だって進んでいない。『書けない』のではなく、『書かない』のだ。逆だと思うか? いや、こっちだ。俺は『書かない』。約1ヶ月後の応募締切の日をカレンダーに丸つけたまま、今年も一歩だって進んでいない。「今年こそ書くぞ!」だ? なんだそれ。プロットだって立ててないのに…。書けるわけないだろ。書かないだけだけど。俺がな。
そうこうして10年。活躍中の作家に比べれば俺のこんな年月なんて僅かなもの何だろうが、俺はこの10年で随分現実を見るようになった。よく大人は…、まあ俺ももうとっくに成人しているが、子どもは純粋云々と息を吐くが、まるっきりその通りだと思う。今だって俺は母親にネタにされるのだ。幼い頃…見ていた夢の話を。
「僕の夢は小説家になることです」
否、本当は今だって夢見ているのだ。でも俺は、『世間』の人の波を逆流していく勇気はない。
「俺はいつか小説家になります」
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