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血はさだめ、さだめは死
携帯の画面に映っていたのは、まごうことなき死の証だった。
「ぼくが……殺しました」
乾いた声で告げると、今頃になって罪の重みで膝をついた。
抗えない愛と忌まわしき血が、このぼくを責め苛む。
赤と青が混ざり、さだめという罪色になった──
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ぼくは四国の片田舎に生まれた。
家は村一番の豪農で、田舎に育ちながらも裕福な生活だった。
地主の跡取りであるぼくを、村人はいつも遠巻きに見ていた。
それは、ぼくの家が犬神だからであった。
犬神とは、古来から伝わる呪術の一種だ。
犬を頭だけ出して地面に埋め、飢餓状態にして首を刎ねる。
怨みを残した頭だけを焼き、壺に入れて祀るのである。
その呪術を為した家は、犬神筋とか犬神持ちと呼ばれ忌み嫌われた。それは犬神筋は富み栄えるのと、もうひとつ別の理由があった。
犬神の家の者は、同じ犬神筋と結婚しなければ家が断絶するとか、他家の者と結婚すると、夫婦が非業の死を遂げるという迷信があった。
その迷信ゆえに、戦前までは近親婚が当たり前だったと聞く。
ぼくの両親も近親間での結婚だった。その忌まわしき血脈ゆえに、周りの者は畏れ忌避していた。
その冷たい視線にさらされながら、ぼくは家の血脈に怯えるように生きてきた。
「呪わしき血のせいだ──」
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