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 この街の夜はよく冷える。 ナツメは廃墟の屋上で街を見下ろしながら、深く深呼吸をした。  ここへ来てから10年もたつけれど、何一つ変わらないこの景色がすきだ。すぐ手前を見れば、雑多に建物が並んだぼくたちの街があり、奥には地平線を塗りつぶそうとしているかのように高層ビルが並んでいる。 「…ふぇくしっ」  本格的に体が冷え込んできたところで、ナツメは屋上を後にした。  廃墟。といっても、ここでぼくは生活している。決して快適な寝床だとは思わないけど、Stellarのなかではましな方だ。ほとんどの子供たちは路上で夜を過ごすのが普通になっている。  そうして螺旋階段を降りたところで突然、目に入った光景に脳が警告を発する。  哀愁に浸っているぼくに見せつけるかのように向かいの道路に大量の血のあとが辿っていた。 「血…誰の…」  ぼくはぎょっとして数秒、ただつっ立っていた。「関わりたくない。」と頭では思っていたが、なぜかぼくの足はその血痕を辿っていた。  それが "彼女"にとって、幸だったのか、不幸だったのかはもうぼくには解らない。
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