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「久しぶり、コウセイ君」
顔を合わせるなり、ハルカはニコッと笑ってそう言った。
「お、おう、ひ、ひひ、久しぶり」
対する俺はというと、女子との会話の仕方を完全に忘れていたのであった。
「どうしたのコウセイ君、寒い?」
「い、いやいやいやいやいやいやいや! 全く何の問題もない!」
いくら今が真冬の一月だからといって、こんな震えかたはしない。そんな震えかたをするのは、女子と会話するときだけだ。
それにしても、ハルカの印象が随分と変わっていて驚いた。
五年前は、日に焼けた肌と肉付きのいい体をしていて、おしゃべりで活発な性格だったのに、今は色白で細身で、すごく落ち着いた雰囲気になった。向こうから挨拶してくれなければ、きっと俺は彼女がハルカだと気付けなかっただろう。
「一応、暖房の温度上げとくね」
ハルカは、なにくわぬ顔でストーブのスイッチに手をのばした。警戒している様子はない。とりあえず、ファーストコンタクトはクリアだ。
さて、どうしようか。
どうやって、なめてもらおうか。
そもそも、ハルカは五年前の約束を覚えているのだろうか。いや、たとえ覚えていなかったとしても、約束したことに変わりはない。
俺には、なめてもらう権利がある。
「コウセイ君、大丈夫? さっきから難しい顔してるよ?」
ハルカが、きょとんとした顔で聞いてきた。
「む、むずか、むず、むず、べ、別にムズムズなんてしてませんが?」
「別にそんなこと聞いてないけど……」
ハルカは、相変わらずきょとんとしている。あの様子だと、やはり件の約束は覚えていないようだ。
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