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「それよりコウセイ君、わたし、アメリカでの土産話がたくさんあるんだよ。聞いてくれる?」
ハルカが、両手の平をくっつけて、楽しそうな笑みを浮かべながら、そんなことを言ってきた。
「へ、へぇ、土産話ねぇ……。そんなに自慢気な態度なら、さぞかし面白い話が聞かせてもらえるんだろうな……」
よし、少し落ち着いた。昔みたいな皮肉を言う程度の余裕は出てきた。
すると、ハルカの方も調子が出てきたようで、腰に手を当てて、まさしく自慢気な表情で口を開いた。
「ふっふっふー。実は、私にも人生初の恋人ができたのでしたー!」
「なんだそんなこここここいこいこいコイ濃い鯉故意乞い恋人だとおおおおおおおおおおお!?」
俺のリアクションを見て、ハルカは満足気な表情をして、自分のケータイの待受画面を見せてきた。
そこに写っていたのは、恐らく20代後半から30代前半と見られる、体格の良い碧眼の男が、パジャマ姿のハルカをお姫様だっこしている写真だった。
「個人経営のお菓子屋さんをやってる人なの。手作りのお菓子をよく持ってきてくれる、すごく良い人なんだよ」
菓子職人……。馬鹿な、こんなのただのオッサンじゃないか……。いや、オッサン特有のダンディーなフェロモンがあるとでというのか……?
そもそも、なんでそんなデリケートな話題を異性である俺に対して堂々と話せるんだ? 昔ながらの天然に磨きがかかってないか? それよりもまずハルカの親は一体なにを考えているんだ? いや、むしろアメリカではこれが当たり前なのか?
いや、そんなことより、もっと重要なことがある。
ハルカは、奴の(…………)をなめたのか?
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